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これは人間の臨終場面のみを記述したものではない。その人間の人生を散文詩のように短く的確に描写している。長大な伝記を読むよりも核心をとらえた短い文章で人の一生を描き、死を描いている。巨大なカンヴァスに描かれた900人ほどの死の場面。この絵を見上げて見つめていると、震えてくる。人は生きて死ぬ、その単純な事実を脳天に叩きこまれるのと同時に、『死に方は問題ではない』という事実に気づく。山田風太郎が知りたかったのは、実は、900人の人生の業績や幸福と彼らの死に方には関連がないということだったのではないだろうか。いや、死に方などどうでもいいのだということを確かめたかったのではないだろうか。キリストは磔となり、釈迦は下痢と腹痛に苦しんで死んでいった。カントは完全に痴呆老人となりユトリロもルノワールもモディリアニも悲惨な死を遂げた。しかしだからといって、彼らの成し遂げたことが損なわれることはない。つまり、死に方の悲惨さと生き方の偉大さには関係がないということ、をこの本で知る。
多くの人は一生懸命生きないで、立派に死ぬことばかり考えている。死に方を考えるより生き方を考えなければならない。そのことを教えてくれるこの本は、いつも手元に置いておきたくなる本である。
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