この書は、「社会契約論」より早い時期に書かれています。そういう意味で「社会契約論」に通じるルソーの哲学の通過点として、「社会契約論」より先に読む価値はあると思います。また読者は本書を学問的に、そして歴史的価値として精読するべきというよりか、それを通り越して、率直に読み物として力をぬいて楽しめるのではないかと思います。
本書は、人間はいかに原始状態で、つまり自然状態において自由で平等であったのか、そしてそこから人間や文化の進歩にしたがって、どのように私有財産や法律などの概念を生み、不平等化による奴隷などの弊害をつくりながら国家を創出するにいたったのかの過程を論じています。その中でルソーは、理性、感情、欲求、自尊心といった人間の性質から、動物、農業、食事、病気、健康、恋愛、アフリカの未開人の生活様式、家族、教育といったものまで、様々な具体例をとりあげつつそれらを組み合わせて人間について熱く述べており、タイトルは堅苦しいですが、ルソー版人類学の側面としておおいに注目できます。個人的には、後半の政治や社会制度の進化と成立の過程論以上に、多くを占めるそういった人類学的な論述の方が興味深くて種々の発見と共に楽しく読めました。少し長いですが原注も必読です。
最後に、もちろん「社会契約論」とセットでお勧めします。