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68 人中、63人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
今だからこそ輝かしい人間性,
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レビュー対象商品: 人間の証明 (角川文庫) (文庫)
この本を初めて読んだのは小学生の頃だ。父の書棚にある本を適当に選びだし貪るように読んでいたとき、手に取った。最近、懐かしさに購入し読んでみた。同じところで涙が出るのが不思議だった。「母さん 僕のあの帽子 どうしたでせうね ええ 夏碓井から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ」 親子の美しい想い出を描いた詩が、あの小学生の頃から不吉で哀しい響きを持っている。 犯人は現在の幸せに固執した。被害者は犯人の幸福を損なうつもりなどなかった。ただ一つの願い「会いたい」というささやかな幸福を求めただけだった。 犯人の人間臭さもさることながら、追う側の刑事たちもドラマティックである。棟居刑事はある事件で家族を奪われ大きな喪失感を常に抱いている。やり場のない衝動を捜査にかたむける様は痛ましいほどだ。 追う刑事達の汗も犯人の焦燥も被害者の涙も、このような時代だからこそ輝かしい。こんな『人間性』は今となってはノスタルジックに語られるだけでしかないとは寂しい。この物語を読んで泣けるということは『人間の証明』なのではなかろうか。 若い二人の、愛を叫んだ物語は二人の世界の話である。この話は世界の一部、都会の片隅で起こった愛の破綻の物語である。近視眼的一人称的に愛を語るのは容易だが、この世は個人だけで動いていない。それゆえの悲劇が本書の殺人事件なのだと思う。甘く切ない閉ざされた世界から一歩踏み出して本書をおすすめしたい。 それにしても西条八十の詩は「かなりや」といいこの詩といい、柔らかいナイフのように心に突き刺さり、じんわりと溶け込んでくる。切ない。
34 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
再会,
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レビュー対象商品: 人間の証明 (角川文庫) (文庫)
あれはもう三十年近くも前になるのか。森村氏の乱歩賞受賞作「高層の死角」でファンになり、年賀状を出したら、返事が来てしまった!さらに根強いファンになり多くの作品を読むことになった。 氏の旺盛な執筆活動とその後の作品群を高く評価するものではあるけれど「証明」三部作、特にこの「人間の証明」は氏の作品の中でも最高傑作だと思う。 映画化され、テレビドラマ化されたこともある。だが、それが、なくてのこの作品は最も哀しく、最もせつなく、最も美しい、そして最も人間を深く描いた作品だと思う。 若い人でまだ読んでいない人も多いだろう。時代で色褪せることのない作品の一つだ。是非、読んでもらいたい。
11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ラストはせつなさ、くるしさが胸に沸き立ちました,
By すみん (大阪府) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 人間の証明 (角川文庫 緑 365-19) (文庫)
過去の作品がテレビドラマ化されることで話題となり原作本を知るという図式で面白い本に何冊か最近出会っている。本書もそうして読む機会を得た。時は昭和50年代か、黒人の青年が東京で死体となって発見される。異国での死。殺人事件を捜査する棟居刑事を突き動かすものは彼の過去の体験が基となっているようだ。 東京、ニューヨークと小説の中に時々、挿入される大都会の風情は社会的に冷徹に客観的な様子で描かれていてどきりとする。今はそれが加速されてしまったのか、どうか。 ラストはせつなく、犯罪者が悪人かというと言い切れない。犯罪者が生まれる社会の構造、人間の業(ごう)を想った。また何より小説冒頭で殺された黒人青年ジョニーの足跡をたどるラストの棟居刑事の語り、彼の少年時代のどうにもならない怒り、その鉾先のくだりはせつなさ、苦しさが胸に沸き立つ感があった。 過去にも映画やドラマとなったそうだがそれはよく知らなかった。今回、めぐり合えてよかった1冊だ。
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