イギリスの小説家、サマセット・モームの自伝的小説。私が最も好きな小説家であり、敢えて「自分の今までで最も重要な本」というものを挙げればこれと『ナポレオン』である。生まれたときから蝦足の主人公は自分の身体にコンプレックスを抱きながらも、なんとか自身の人生の方向を模索する。モラトリアムのためにハイデンベルグに留学した後、芸術家を志しパリへ。しかし、努力では追いつけない才能と現実のギャップに直面し、イギリスに戻り堅実な道として医者を目指す。途中熱烈な恋愛に落ち、さんざん振り回された挙句に捨てられるという経験があったり、猛烈な努力をしていた友人が現実に耐え切れずに自殺したりと波乱万丈の人生。最後はハッピーエンドなわけだが、多くの人生経験の中で徐々に主人公が成長していくことが、あたかも自分の事のように感じられる作品。そのため、読み終わったあとは自分も人間として一回り成長したような気にさせられる。
個人的に好きな部分はパリ時代の友人に「人生ってなんだろう?」と聞いたときに「これだね」といってペルシャ絨毯の切れ端を見せるシーンである。後に主人公はその意味を「ああ、人生に意味なんてないんだ。あの切れ端と一緒で。」といって納得し、それまで意思や体面にがんじがらめになっていた自分から解放されるわけだが、人生の意味に取り付かれながらも最後は自分なりに答えを出していく過程が如実に現れている。繰り返すが最高の傑作。人生に迷ったらこの本を。なんとなく、「ま、いろいろあるんだな、人生」などといいながら気が楽になる。