ユーモアSFの鬼才シェクリイの魅力を余す事無く伝える第一短編集。初期の筒井康隆氏を和製シェクリイと言わしめた程に、彼の作品が日本SFに与えた影響は大きいと言われます。その作風は、一見ドタバタSFの体裁を取っていますが、それだけでは無く鋭い文明批評に満ち溢れていて眼を開かされます。収録全13編が何れも奇妙な味わいに満ちており、一癖も二癖もあって一筋縄では行きません。
『怪物』『儀式』は、異星人の立場から、メンタリティの違いによって人類と意思の疎通が図れない様子をグロテスクに描きます。
表題作『人間の手がまだ触れない』は、食料を求めて訪れた惑星で二人の乗組員に悪夢のような出来事が雪崩の如く襲い掛かります。『専門家』は、宇宙のさまざまな生命体の協力によって構成された宇宙船が事故に遭ってプッシャー(推進係)が死んでしまう。帰還不能となった彼らは新たなプッシャーを求め旅をして、進化した種族が住む惑星地球を見つけるが・・・。真理に目覚めるラストが感動的です。
『七番目の犠牲』は、戦争抑止の為に殺人を合法化した社会で起こる人間狩りが描かれます。ラストの非情さは恐ろしい程の迫力で、好戦的で愚かな種族である人間の姿に戦慄を覚えます。私はこの作品が本書のベストと思います。
奇想天外なストーリーを気ままに楽しむも良し、物語の底流に潜む寓意に思いを馳せるも良しの、どなたにも必ず素晴らしいひと時を約束してくれる極上の一冊です。