東電福島第一原発事故の影響は、空気・土壌・水から、食品へと広がり続けている。これからの日本人(そして程度の差はあっても、世界の人々も)は、低レベル放射能の世界を何世代も生きなければならない。本書は、年間100ミリシーベルト程度以下の放射線(内部被爆を含めて)が人間や環境にどのような影響を及ぼすかを科学的に網羅した本である。
原著は1994年に出版されているが、近年の放射線防護の考え方については、訳者が懇切な注で補足しているので、内容は古さを感じさせない。訳文もよくこなれている。
本書の中心概念は、「ペトカウ効果」と呼ばれるものである。年間10ミリシーベルト程度の低線量であっても、効果対放射線量曲線が「上に凸の曲線を描く効果(逆線量効果)」を持ち、人間や環境に大きな脅威となりうることを、多くのエビデンスを引用して論証している。その影響の範囲は驚くほど広い。ICRP(国際放射線防護委員会)の見解とどこで異なってくるのか、歴史的経緯も詳しく説明されている。政府発表に飽き足らない人が、徹底して学ぶのに相応しい本といえる。