本書は
53歳で東大に再再入学した著者が
文学部西洋史学科を卒業するまでの
4年間の体験記・思索記です。
第一部がトライアスロンで銀メダルを取った話。
第二部が東大文系の講義の評論と感想。
第三部がフィリピンの極貧スラムでのホームステイ記録。
個々のエピソードは余人にまねできない体験であり
思索の内容も「さすが」と感じさせる高レベルです。
しかし
仮に50歳のビジネスパーソンが
『自分も人生を変えてみたい』と思い立ち
その参考にしようと本書を手に取ったならば
期待は裏切られることでしょう。
おそらく何も参考にならないと思います。
なぜなら
書名にひかれて「読もうかな」と考えた中高年の方々は
「起業してみたい」
「脱サラしたい」
「会社は辞めずに副業してみたい」
「何か人生を変えてみたい」
などの思いをお持ちなのではないでしょうか。
そういうプロセスは本書には描かれておりませんし
「五十から人生を変えられる」という根拠も示されておりません。
結局、53歳から人生を(期間限定で)変えた、その後の奮闘記に過ぎません。
著者は
77年、東大工学部物理工学科卒業
84年、東大医学部卒業
という履歴をお持ちの外科医です。
特に抗がん剤によるがん治療で優秀な方です。
率直に申し上げて
あまりに優秀過ぎて「ユニーク」なため
(私のような)庶民の惑いに答える内容とはなっておりません。
07年、東大文学部に再入学、
11年、卒業されましたが
結局、外科医に戻られたそうです。
その意味では
「人生変えられる」どころか
結局「人生変わっておりません」。
とは言え、個々の内容は大変示唆に富んでおりますので
是非、若い人に読んでほしい本です。
医学部の学生
東大文系の学生
東大を目指す高校生・予備校生
アスリート
スポーツ業界関係者
ボランティアや南北問題に興味ある人
などの方々には大変有益だと信じます。
特に、東大をはじめ
全国のほとんどの医学系大学で「医療倫理」の講座がありますが
その内容は
『ツッコミどころ満載』(P.242より引用)
であるという御指摘には賛同します。
「医療倫理」には8ページしか割かれておりませんが
読者一人一人の中で問題提起をするための契機となると思います。