例えば泉谷しげる「黒いカバン」、古井戸「さなえちゃん」、佐藤公彦「バイオリンのおけいこ」……といったコミック・ソングでアルバム1枚作りました、という感じの作品である。参加者がいまいちはっきり判らないけれど、泉谷しげると亀渕昭信を中心にエレック・レコード人脈が大挙して悪ノリしている模様。作詞・赤塚不二夫、作曲・加藤和彦なんてナンバーもある(これがまた歌詞とメロディ展開のリンクさせ方が絶妙)。
内容的には、ジョイント企画にありがちな緩さはいくらか感じられるものの、音楽的には意外な程きちんとしている。そこにシニカルな歌詞やサウンド・コラージュを乗せている。結構政治的なネタが多く、それだけにどうしても時事的な事柄が風化しているのはしかたがない。そもそもこれほど音楽と政治意識が接近している状況は昨今ではそうそう見られないのであって、やはりそういう時代の産物だというエクスキューズは必要だが、逆にそのための過小評価も避けたいところである。どの歌もしっかり耳に残っていることは認めざるを得ない。
匿名をいいことに(?)ここまでやるかというエスカレートっぷりには苦笑させられる(泉谷の声は一発で判るけど)。その中で作詞・松山猛、作曲・加藤和彦の「子供達に聞かせる歌」は一服の清涼剤、ではあるのだが、それがまるごと反語的にも聴こえるあたりなかなか高度、というかこれは聴き手側が問われているのである。
全体的に“言いっ放し”な印象はあるけれど、それだけ言いたいことがあったということだろう。しかし、ジョイント企画がこういう悪ふざけ的なものになるのはいかにもエレックだと思う(URCレコードの場合は『溶け出したガラス箱』という実験的なサイケ・アルバムになるのである)。