アニメの長編にしては珍しく、しっかりした「映画」になっています。
発展と進歩の裏に喧騒と混乱を抱える都市=架空の戦後東京。
立場を異にする組織同士の縄張り争い=自治警と首都警、二つの警察組織。
住む世界の違う男女の予め引き裂かれた恋=「警官」伏と「テロリスト」圭。
プロットは実に古典的です。が、設定が煩雑な映画でこれは常套手段です。監督は、古典の持つ強靭な物語の骨組みを支えに、観客になじみの無い設定を、状況を動かす要素として過不足無く劇中に配置します。
その合間に、緻密に描かれた昭和30年代の風景が世界の奥行きを見せ、登場人物はそれら近景と遠景の前で、見事な作画の演技で等身大のドラマを演じます。
そしてこれらに、映画として情感を与えている「テーマ」。
この「テーマ」が実直なまでにぶれない。全てのシーンがきちんと「テーマ」を内包した上で描かれている。これがこの映画が映画たり得た肝でしょう。
この「テーマ」は、古典的であるはずの人狼の物語が、実はよくある悲恋とはやや異なる展開を見せている事で容易にわかります。
つまり、この二人が、恋のためには自らの立場を捨てない事です。
捨てられない、の方が正確でしょうか。
伏は自らの獣性ゆえに、圭はテロリストとしての過去ゆえに。
「いるべき場所がある理由と、そこに留まらざるを得ない不自由」
私見ですが、これが全編を貫くテーマでしょう。
もって回った台詞回しに過剰反応してしまう理屈屋さんはともかく、背景すら映像にしてしまう技術に裏付けられた監督の確信は、エンドロール直後、必ず見た人の心に何かを残すはず。とは言え、暗すぎるので星一つマイナスです。
最後に不満点のようなものをひとつ。
圭の人物造形が作品のトーンから浮いていますね。声、台詞、しぐさ等。
意図されざる演出意図、と好意的に受け取りますが、やや鼻白む所です。