この著者はよっぽど中世史が好きなんだなあと感じる一書。
中世という時代そのものへの愛であり、中世史を彩る人々への愛でもあろうか。
ここまで好きなことを仕事に出来ると言うことは羨ましくも感じる(勿論、苦労はそれ以上にあろうが)。
源頼朝に始まり、織田信長に終わる8人の人物を中心に中世史を構築しようと言う野心的な試みである。源頼朝、法然、足利尊氏、織田信長といった有名人から九条道家、細川政元といった少し詳しい人ならば知っているかなという人物、三宝院満済のような誰それ?といった人物まで幅広い。
しかし、読了してみると、なかなか、著者の考える中世の各局面を代表する人物を集めたなあと人選に感心するところである。
この書の中世史観の中心となるのは王権論である。東の王権たる鎌倉幕府と西の王権たる朝廷、王権の統一を目指し、そして挫折し王権の縮小を図った室町時代、王権を乗り越えていった戦国時代。単なる人物史に終わらず、中世という時代の色を読み取ることが出来るように著述が構成されている。
王権論が著述の縦糸とすると、中世社会の各種の特長が緯糸である。鎌倉時代初期の御家人の価値観、中世の仏教界、朝廷の官途、御成敗式目の法的性格、戦国時代の上洛の意味づけといったところが紹介されている。この縦糸と緯糸を組み合わせることによって現代人の感覚ではわかりにくい中世という時代をとらえようと試みている。
一般書だからか、文体は軽いが、内容はなかなかに骨太である。
正直言って大学レベルの日本史の知識や素養がないと内容の理解は難しいように感じた。
歴史好きというより、歴史学好きの人に勧めたいところである。