書評を書くというのは大変責任のあることで、星1つの違いにより本の売り上げが増えたり減ったりする事を思えば、あまり軽卒な意見も言えない訳ですが。でもそうした気おくれを押してでも未読の人に伝えたいのは、今現在リアルな人格障害に係って苦しむ人にとって、この本はとても多くのヒントと示唆を与えてくれるでしょう、ということです。私は5年前にこの本を買い、1〜4章・類型とその説明あたりを眺め読みして、人格障害との闘いに明け暮れ、ほとんど敗北しましたが、やっと再生の小康を得ました。ふと思い出して頁をめくった時に、この本のありがたみをしみじみと実感しました。特に後半、5章から8章あたりに含まれる、慎重な記述から伝わる言葉の重さ。人格障害の書物は多くなりましたが、例えば眼を閉じて片足で立っている工夫のすべてを文字で伝えるのが至難なように、ある所から先は受け手の感性を働かせて対応せねばならない部分がどうしても含まれます。改善のキーワード「受容」「枠組み」なども、対応者が自分で出力調節せねばならない難しさを含んでいますが、どこにどれくらい力をかけたら良いか、又は力を抜いたら良いか、の雰囲気はこの本でつかめると思います。ただしそれには、読み手は1行1行を慎重に噛みしめる必要が有るでしょう。後半の社会論的な展開も、学究の世間よりはむしろ現実社会の混乱を見かねて書かれたように推察します。人格障害は親から子に益々伝播しやすくなっている、を親の世代は真摯に考えねばなりません。生身の人間に対する感性を育てる大切さを説いているように思いました。