著者は18世紀前半のイギリスの哲学者。この本は「新しい原理に基づく人間学」の構築が志された著者の代表作である。
第一篇「知性に就いて」の序論において、「人間学に与え得る唯一の確かな根底は経験と観察に依らなければならない」と述べていて、著者の思想が自然学(自然科学)を基盤としていることが良く分かる。そして、「人間の心に現れる一切の知覚は、帰するところ、二つ別個な種類となる、私はその一つを『印象』と呼び、他を『観念』と呼ぼう。」と述べ、「観念の源は印象にある」という第一原理、「想像が自由に観念を置き且つ変える」という第二原理を洞察する。
我々は、とかく乏しい経験や偏った観察に基づいて想像を膨らませ、結果的に誤った観念を持ちやすいものだが、250年前のこの名著は、そのことの自覚を改めて促すものであると思う。
今回読んだ中で、特に印象的であった文言を二つだけ紹介してみました。
●『人間とは様々な知覚の束である』。この知覚の束は、永遠の流れと運動の中にあって、思いも及ばぬ速さで次々に継起する、という。自分って一体何だろうと思ったときに、解決のヒントになるかも。
●『正義の起源の由来するところは、利己心と身近な愛情と少ない物資、これだけである』。正義は人為的徳であり、正義の核には所有があり、正義の感は社会の黙約(約定や契約ではない)と教育により必然的に起こるものである、とのこと。お互いに正義だといって争いが起きた時に思い出すと良いと思います。
尚、この本は三篇(知性に就いて、情緒に就いて、道徳に就いて)に分かれていて、文庫で四分冊になっていますが、第一分冊(第一篇 知性に就いて〈上〉)のところにまとめて記しました。