2010年06月発売。小峰隆夫(1947−)さんは経済畑の官僚だった方で現在は法政大学の教授、人口問題についてはここ8年くらいのかかわりのようですが、経済統計解析的な手法で問題点をグロスで整理する点では適任の方、ゆえに本書も各論的にフォローしきれていないポイントがあるようには思いますが、論点を整理するという意味では必読と言えますか。
◇以下ポイント抜粋。
・少子化現象は世界の多くの国で見られるが、こうしたメカニズムが作用して、現実に人口が減り始めたのは日本だけである。
・ここ数年の合計特殊出生率の上昇は、主に晩産化によってもたらされたのではないかと考えられる。
・日本の合計特殊出生率が安定的に2を下回り始めたのは1975年である。
⇒団塊ジュニア世代の人口増に対しての施策の成果があらわれている
・そもそも日本が世界第2の経済大国であり得たのは、日本がいち早くキャッチアップに成功した一方で、人口大国が日本を大幅に下回る所得層に甘んじていたという過渡期における一時的な現象だったことがわかる。
⇒ユースバルジ(
自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書))を吸収する非暴力的要因が国内にあったための現象
・かつては国際的に見て高いほうだった日本の貯蓄率は1990年代以降急速に低下しており、最近時点では先進国の中で最低に近い状態となっている
⇒国内の個人貯蓄がどこに使われたか:証券などへの投資、住宅を中心とする建築・建設…
・高齢者の就業率を国際比較すると、例えば、65〜69歳の男性では、日本の就業率が45.6%であるのに対して、フランスは4.1%、ドイツは7.2%にすぎない。
・問題は、(高齢者寄りという)政策的意思決定のバイアスが、人口オーナス時代に求められる政策的方向とは全く逆であることだ。
・現在の民主主義には、負担を担わされる恐れのある将来世代が意思決定に参画できないという根本的大問題
・少子化が止まって子どもの数が増え始めると、一時的に子どものための負担が増える。つまり、子どもの数が増え始めて、それがまだ生産年齢人口に達しない過渡期においては、一時的に従属人口指数が上昇するという局面が来る
・人口オーナスから脱却するためには、どこかの世代が一度だけ「未来のためのコスト」を払わなければならない。われわれは進んでこの未来のためのコストを負担し、新しい経済発展のモデルを作り上げていく必要があるのではないか。
⇒この「我々」が、小峰さんの世代をさすのか、生産年齢世代をさすのか、近い将来の世代をさすのかは不明。
◇以下個人的に気になっているポイント
・一般的な人口構造の区分 年少人口(0〜14歳)、生産年齢人口(15〜64歳)、老年人口(65歳以上)の区分が社会構造や産業構造の実状から乖離している印象がある。
・各人口区分内の経済的・社会的階層については生産年齢の男女に関してを除くと、ほぼ考慮されていない。本書の主旨からは若干外れるが、例えば近年の非正規雇用者のかなりの割合が60歳以上で占められているというような事象をどう考えるか等。