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人口論 (中公文庫)
 
 

人口論 (中公文庫) [文庫]

マルサス , 永井 義雄
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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人口論 (中公文庫) + 人口から読む日本の歴史 (講談社学術文庫 (1430))
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登録情報

  • 文庫: 242ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1973/09)
  • ISBN-10: 4122000335
  • ISBN-13: 978-4122000339
  • 発売日: 1973/09
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ふんふん トップ100レビュアー
形式:文庫
 本書の「人口は、制限されなければ等比数列的に増大する。生活資料は、等差数列的にしか増大しない」(p.23)という命題は、高校の教科書にも載っていてあまりにも有名だ(生活資料=食糧)。人口と食糧の増加の比率については、本書の中にもいくつかの数値が登場するのだが、結局のところ歴史的経験に基づくマルサスの印象に過ぎないので正確さは期待してもしかたがない。しかしとにかく、食糧が増えるスピードよりも人口が増えるスピードの方が一般的に速いから、飢餓を回避するのは難しいということをマルサスは指摘したわけである。
 ただし、マルサスは単にそういう事実を指摘するだけのために本書を著したのではない。「救貧法」と「進歩主義」を批判することこそが目的であった(というかほとんど後者の批判がメイン)。

 イギリスの「救貧法」にはいくつかのバリエーションがあって、歴史も長いので一言では説明できないが、要するに国民から税金を集めて貧乏な人たちに様々な形で分配するという社会福祉法である。マルサスがそれを批判したのは、金持ちから貧乏人へいくら所得を分配したところで、食糧の絶対量が不足したままであれば(余分な食糧がないのであれば)、食糧価格が上昇することはあっても、貧乏人がメシを食えるようにはならないからだ。

 だからマルサスは、社会福祉を充実させるよりも、農業生産に力を入れる政策を実施して、食糧を増やすことを考えるべきだと主張した。
 論法として単純すぎるので、現実の(とくに現代の)経済政策にそのまま当てはめられない部分もかなりあるが、忘れて構わない論点ではないだろう。

 「進歩主義」の思想家として具体的に登場するのは、数学・哲学者のコンドルセと無政府主義者のゴドウィンである。とりわけマルサスが執拗に批判しているのは、彼らが唱えた人間の「完成可能性(perfectibility)」、あるいは無限の進歩の可能性という思想であった。人間の理性は元来完璧なものなので、それを解放してやれば万事うまく行って、いずれ人間社会からあらゆる苦悩が取り除かれるだろうという楽観主義である。

 様々な意味合いでマルサスはこの思想を攻撃しているのだが、やはり批判の要点は、ゴドウィンやコンドルセが「食糧問題」を軽視しすぎているというところにある。食糧生産に限界がある以上、人口はある水準以下に押しとどめられる必要がある。しかし、「人口の優勢な力は、不幸あるいは悪徳をうみださないでは抑制されない」(p.36)のだ。要するに、餓死者を出したり結婚を諦め(る人が多くなっ)たり、捨て子をしたり戦争で殺しあったりしない限り、人口は減らないということである。だとするならば、苦痛や不安のない「完成」された社会を構想するのは無意味だということになる。

 「人間の制度の欠陥を見いだすことほど容易なことはなく、適切な実際的改良を示唆することほど困難なことはない」(p.153)のであって、マルサス自身も結局のところ人口‐食糧問題を平穏の裡に解決する方法を提示してはいないし、現代の世界でもまったく解決されてはいない。ほぼ永久的に、人間は不幸であらざるをえないのだ。

 しかし、「害悪が世界に存在するのは、絶望をうむためではなく、活動をうむためである」(p.222)のであって、「活動は精神をつくりだすのにあきらかに必要なようにおもわれる」(p.205)とマルサスは言う。悲劇が存在するからこそ人間は活動的であり得るのであり、その活動の力によって人間は自らの精神を成長させ、曲がりなりにも文化を生み出してきたのである。「人口と食糧とがおなじ比率で増大したとすれば、人間はおそらく未開状態から脱しなかったであろう」(p.207)ということだ。

 またマルサスは、「人生のかなしみと困窮とは……心をやわらげ、なさけぶかくし、社会的共感をめざめさせ、キリスト教道徳のすべてをうみだし、また慈愛に活動のひろい余地をあたえるために必要であるようにおもわれる。……それらのやさしい資質をもつ魂、これらのよろこばしい共感によって目ざめ、活力をあたえられた魂は、たんなる知性のするどさよりも天界と密接な交渉をもつようにおもわれる」(pp.211-212)と言っている。逆に言えば、社会から不幸が消えるとき、人間は徳性を失って神から見はなされるだろうということだ。

 ちなみに、翻訳は申し分ないし、言っていることが単純なので読みやすいです。
このレビューは参考になりましたか?
18 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By θ トップ1000レビュアー
形式:文庫
古典だが、今読んでみても十分面白い。

言いたい事は「人口は幾何級数的に(つまり2,4,8,16のように)増加する。だが食料は算術級数的に(2,4,6,8のように)しか増加しない」ということだけ。
そこから貧困の必然性と、人口抑制の必要性を説いている。

もっとも、このこと自体は第1章ですでに述べられてしまう。
マルサスが残りで行うのは、自身の立てた仮説の綿密な検証である。
ありうる反論を一つずつ検証し、そして棄却していくのは読み応えがある。

ところで、現在の世界の状況はどうなのだろうか。
発展途上国では人口爆発が起きており貧困が激しい。
一方、豊かな先進国では少子化が深刻である。

確かにマルサスの時代と比べて人口は爆発的に増えている。
しかし、マルサスは食糧の増産も可能だとしているのだから、人口の増加は直ちにマルサスの理論への反論とはならないだろう。
現に、マルサスの時代から今までの間、戦争などによってたくさんの人が死んでおり、また貧困でもそうである。

最後に、これは私の勝手な考えだが、「利己的な遺伝子」でドーキンスは、人間は遺伝子に逆らえると述べている(例えば避妊)。つまり、人間は子孫や遺伝子の最大化に逆らいうる。
しかし、人間がそのように遺伝子に逆らえるのは、人口が増えすぎるとマルサスの論により共倒れの事態になる、それを回避するためであるのかもしれない。マルサスの言うところの「道徳的抑制」である。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By kaizen #1殿堂
形式:文庫
人口問題は,波動的に再帰する。
その都度、マルサスの見直しが行われる。
BRICSと言われるブラジル、ロシア、中国、インドにおいて,人口問題がいかに経済に影響を与えているかを考える際に読むとよい。

経済学では,その理論の前提としている制約条件について明示的な記載をしていない場合がある。記述から類推して,定式化してみるのもよいだろう。

ズュースミルヒの「神の秩序」 (統計学古典選集 復刻版〈第3巻 大原社会問題研究所編〉)のような、
当時の人口論の状況を知らないと、マルサスの論点の近代的なところが理解できないかもしれない。

社会的な論説は、後代になると、当たり前のことしか言っていないように感じることがある。
当たり前のことしか言っていないように感じる場合は、その論説が、当時には鋭いものであったと仮定するとよいだろう。

前後の理論を読めば、マルサスの論点が明確なことが分かる。
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