失敗とは意図に反してできるものだが、進化がなにものかの意図によって起きていると著者が主張しているわけではなくて、出版社側の事情による書名であろう。ともあれ、人体を特定の機能を付与するという目的において眺めた際に、一見不合理な部分があるように見える、それが種の進化の観点からどう説明されるのか、というような主題。
しかしそれだけでなく、人体と言わず長年にわたって解剖に携わった著者は、学問のあり方についての独自の主張を展開する。ということで、論旨がいくらかゆがんでいる。それに、この本の出版の約4ヶ月前に同じ著者が講談社現代新書から「解剖男」を出している。「解剖男」が生物一般を扱っているのに対して、この本は人間に焦点を当てたその続編として読んだほうが著者の進化に対する考え方や、解剖に対する姿勢との対応がよくわかる。
ともあれ、この道を深く極めたものとして、著者の人体構造に対する見識の深さには感心してしまう。
失敗という、意図を前提とした解釈に立って人体の進化を見ると、逆に何者かの意図が働いているとは信じられないくらい人体構造は不可思議だ。つまりは本の題名とは逆に、何者かの意図を否定することにつながる。著者の、死体に対する醒めた視点はそこまで見通しているのだと思う。