ビジネスマンが予備知識なく読める初のメンタルマネジメントの良書だと思います。特に、専門書によくある「現場から見ると無理な注文」がなく、管理職が明日から実践できる処方箋が書かれている点に感心しました。但し、書いてある内容は研究論文などを引用していて決して底の浅いものではありません。これは、著者がビジネス・スクールの教授であるため、ビジネスマンにわかりやすい事例の設定や表現方法になっており、メンタルヘルスの本でありながらビジネス書のようにすいすい読めるのではないかと思います。
具体的な処方箋としては、全社的に取り組む方策と管理職として個別に対応するべき点が明確に書き分けられていて、理念論に陥りがちな専門書と違い、すぐにでも行動に移せる方法や示唆に富んでいます。特に会議の運営方法にまで言及してる本は初めてでした。
更に、これまで社会常識に囚われて、あまり知らなかった点として、「できる人から燃え尽きる」「ストレステストより過重労働チェック」「うつ病と人格障害の違い」「健康管理は管理職の仕事」などなど目から鱗の内容が続いています。これらは、産業医・企業幹部・人事異動を体験したリサーチ職などの筆者の多様な経験が、多面的な分析や鋭い洞察を可能にしたためと思います。
但し、最後に希望を言いますと、本書は無意識に大企業を前提に書かれているような気がします。本書の中には特に中小企業向けに書かれた内容もあるのですが、産業医の活用や人事部の積極的な対応を促していることから、多くの中小企業にあてはまらない印象を受けました。非常にわかりやすい内容なので、日本の労働者の大部分を占める中小企業向けの続編を是非読んでみたいものです。