「どんなに堤防を高くしても、それを壊し乗り越える津波が必ずやって来る。どんなに強靭な建物を作っても、自然の力には勝てないこともある」「安全には死角がある。その死角のほとんどは人的なものに起因している」。
防災心理学の本。多くの例を取り上げて説明している。要点がうまくまとまっており、大変読みやすい。著者は40年に渡って、M9.2を記録したのスマトラ島地震など多くの自然災害、テロ、事故、事件の調査をしてきた専門家。
我々の先入観とは違い、人は危機に直面しても簡単にはパニックにならない、と繰り返して強調している。むしろそこに落とし穴があり、特に集団でいる時は、それゆえに逃げ遅れてしまうことすらあるという(集団同調性バイアス)。また、パニックを恐れて行政が情報を隠したり出し渋ることについても警告している。専門家や担当者の言うことを過度に信じすぎてしまうことについても注意している(エキスパートエラー)。「生死に関することは、自分の五感で確認した情報に基づいて自分で意思決定することが大切だ」とのことである。
一方で、何かあったらまず速やかに「知らせる」ことの重要性や、災害時には「傍観者」にならずに安全を確保したら「闘う防災」を行うこと、いざという時に適切な判断ができるようになるためには正しい知識を普段から身につけておくこと、非常時には経験に縛られて硬直的に動かずに臨機応変に対応すること、震災の時には携帯電話はつながらない、建物が壊れるような地震で机の下に潜るのはナンセンス、家具は固定しておきいつでも脱出できるようにする、普段から必需品は多めに置いておく、といったこともアドバイスしている。震災の度に繰り返される「想定を超えた規模」というお役所の発言に対しても厳しいコメントをしている。
「自由や安全は、何をせずとも手に入るものではない。普段の努力があって初めて持てる権利である」とのことだ。