本書は中村医師へのインタビューに、澤木氏によるペシャワール会活動経過の記述が交互に織り込まれる形になっています。この本は二つの意義があると思います。一つは中村医師の考えをより深く知ることが出来ることであり、もう一つは中村医師以外の人の手によって、しかも史実を世に伝える作家によってアフガニスタンの真実が世界に伝わることです。
何故、中村医師がこの困難な事業を持続することができるのか、原動力となっているものを伺うことが出来ました。特に印象に残ったのは、医師のバックボーンとなった遠賀川の流域の人を分け隔てしない気質であり、「宗教の共通性」で述べられている崇高な精神です。医師は「神聖さの根源は人が語りえない奥深いところで輝いている、何かしら人の超えてはならぬ神聖な空白地帯を、その地域と時代を共有できる形で戴いている」と述べられています。医師は、アフガニスタンの貧しくも敬虔に生きる人々の中に、論語や聖書を学んで得たと同じ大事な生き方を観、それを守ってこられたのだと思います。そして用水路が出来、何十万人もの命がまもられました。
アメリカをはじめとする西欧諸国の間違いは、「神聖さの根源」から違った形で出てきている文化を認めないで、自分たちの文化や民主主義を武力で押しつけていることです。さらに毎日のように住民の命が奪われていることです。インタビューから残酷さが伝わります。いまさらにアメリカの過ち、それに追随した日本の過ちを思います。この戦争をどうして世界は止めることができないのでしょう。この本が多くの人に読まれて、反戦の声、アフガニスタン支援の声が広がることを念じます。
伊藤さんの事件の時は悲しく、「信頼」が裏切られたような思いで衝撃を受けました。医師は、「暴力が敵だ。暴力は私たちの心に潜んでいるのであります」と会報で書かれました。ダライラマ法王の「敵は自分のうちにある」という言葉と同じだと思ったのですが、その敬虔な姿勢が、アフガニスタンの人々との信頼を維持し、平和をもたらしているのだと思います。
中村医師を応援できることは幸せです。本書を出してくださった澤地久枝先生に感謝いたします。