思い出から逃れられない男と
相手の思い出を振り払いたい男。
きっと全ての男がそうであるように
自分もまた、好きになった相手の思い出に嫉妬し
しかしながら自分の思い出からは逃れられない。
僕には戸田さんの気持ちも安東君の気持ちも
痛いほどによくわかる。その両者の間で
揺れなければならない栞の心も理解できる。
登場人物は皆、心が繊細である。
だからこそ必要以上に誰かを傷つけてしまう。
誰かの気持ちには感情移入できる。
誰の気持ちになったとしても胸が締め付けれらる。
辻作品の中では文章に稚拙な印象を受けるが
登場人物の心の動きが鮮やかに描写されており
惹きつけられて読み進むことができる。
大きな恋愛を経た二十代後半以降の方に
真に迫るものがあるのではないだろうか。