「人にはそれぞれ役割があります。私の場合はさしずめ、伊藤忠にとって考えられるすべての膿を掻き出すことだった」と述べ、自らを「掃除屋」と割り切って社長職を引き受けたと言う。また、「自分の人生なんてたかが知れている。社長を辞めたらタダの小父さんだ。格好つけたってしょうがない」と言ってはばからない。こうした著者のエネルギーが組織全体に浸透していく様子を、様々な経験談を通じて描いていく。数え切れないほどの社員とEメールで直接対話する地道な努力や、「給料に差が付くのはしょうがない。しかし仕事で自らが育つ『見えざる報酬』を与えたい」という願いは、人生の多くの部分を仕事に重ねることの清さを、若い世代に訴える迫力に満ちている。
(日経ビジネス 2005/03/28 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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「人間の能力はほとんど差がない」「ある日、必ずDNAのランプがつくと確信して努力する。」「DNAのランプが付くまで諦めるな」というメッセージは、サラリーマンへの叱咤激励ではあるが、同時に経営者への人材育成に関する、重要な主張であろう。個人の努力だけをひたすら鼓舞する経営者に対して、「人は育つ」という基本的発想を持つことを訴えているように思える。
業績が低迷しているときは自ら無給にし、社用車ではなく電車通勤をし、社長六年任期を明言する。ご自身の信念が明確でシンブルだから、組織にとって何が本当に重要なことかが、見えておられるのであろう。それが、「日本が長期にわたって奪われないものとして『人と技術』を持たなければならない」、という最終章でのアピールにつながっているのである。
「確信というのは周りから狂っているのではないかと思われるほどの信念に裏打ちされたものでなければならない。強固な意志でなければ周りはついてこない」「相場は科学的に分析してやるもの。情報を集めて分析し、決断を下す。経営者の決断力は相場によって養われる」こうしたことも相場で失敗しかかった時などの経験で語られていて、ビジネスマンとしては興味深い。
「自分の価値観がしっかりしていれば自律自制の精神も自ずと働いてきます。厳しい局面に遭遇しても軸がぶれないから適切な判断を下せます。社会生活における行動規範というものは常識的なものばかりです。しかし常識というものは相当勉強しないとそれを維持していくことはできません」軸や常識のないトップの辛さは組織全体に影響します。トップに限らず、組織の長たる人間はこうした言葉をかみしめるべきだと思います。しかし、こういう人が上司だときっと大変は大変だよね。
生真面目で、率直で、行動力がある。商社には珍しいほど清廉な人だ。
そして、著者は猛烈な読書家であり、「これまでの人生で誇りに思うのは絶対に読書を欠かさなかったことだ」と語っている。著者40代のころに業界紙に「アメリカ農業小史」や「アメリカ農業風土記」を連載したり、外国書籍を翻訳したりしている。
頻繁に「ワイフ」が出てきて家庭円満振りが伺える。
初めから終わりまで気持ちよく読めた。変に奇をてらうわけでもなく、自慢するところもなく、すがすがしい。このような社長のいる会社なら、だれでも働きたいと思うのではないか。就職活動をする学生や若い人達に一読をお勧めする。
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