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人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)
 
 

人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫) [文庫]

フロイト , 中山 元
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

人間には戦争せざるをえない攻撃衝動があるのではないかというアインシュタインの問いに答えた表題の書簡と、自己破壊的な衝動を分析した「喪とメランコリー」、そして自我、超自我、エスの三つの審級で構成した局所論から新しい欲動論を展開する『精神分析入門・続』の2講義ほかを収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

フロイト,ジークムント
1856‐1939。東欧のモラビアに生まれる。幼くしてウィーンに移住。開業医として神経症の治療から始め、人間の心にある無意識や幼児の性欲などを発見、精神分析の理論を構築した。1938年、ナチスの迫害を逃れ、ロンドンに亡命。’39年、癌のため死去

中山 元
1949年生まれ。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 333ページ
  • 出版社: 光文社 (2008/2/7)
  • ISBN-10: 4334751504
  • ISBN-13: 978-4334751500
  • 発売日: 2008/2/7
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
 人間にある死の欲動とは? 人格を形成する「超自我」「エス」とは?……シリーズ第2弾の本書は、フロイト後期の精神分析理論(メタ心理学)を紹介しており、第一次大戦以降、理論改造しながら心の深層に鋭いメスを入れ続けた〈フロイト・ワールド〉の一端に触れることができる。

 収録しているのは、彼が研究生活の後半に発表した書簡や論文など5編。

 表題の「人はなぜ戦争をするのか」は、晩年の1932年にアインシュタインと交した公開の往復書簡。「人間を戦争の脅威から救い出す方法はないのか」――など、アインシュタインが質問したのに対する回答だ。

 この中でフロイトは、人間には生を望む欲動とともに、自らの死を望む欲動(タナトス)が存在する、とした「欲動論」を要約。死の欲動は外部に向けられると破壊欲動になることなどを指摘、「人間の攻撃的な傾向を廃絶しようとしても、それが実現できる見込みはない」と、悲観的な見解を示したうえで戦争防止に向け独自の提案をする。この欲動論は最後の「不安と欲動の生」(1933年)で、不安の考察を進めながら詳述されている。

 また、「心的な人格の解明」(同前)では、人の心をひとつの装置と捉えた「心的装置論」をわかりやすく解説。前期のフロイト理論で心のうちを〈意識〉〈前意識〉〈無意識〉の“3領域”に区分して考えたのに対し、さらに〈自我〉〈超自我〉〈エス(Es、原始的自我)〉という、人格を形成し、エネルギーを持った深遠な領域まで踏み込み、それぞれの特性や相互関係を解き明かしている。これは精神分析にとって大きな方向転換であり、後に発達する自我心理学の出発点になった理論だ。

 このほか、「戦争と死に関する時評」(1915年)において、第一次大戦による道徳の崩壊を欲動論と死の問題、両面から検討。「喪とメランコリー」(1917年)では、愛する者の死に対する人間の反応を分析、それが病へと移行するプロセスを究明している。

 全体を通じ、第一次大戦を境に精神分析体系の変革を試みたフロイトは、より心の奥深くへと探求の錨を下ろし、理論を深化させていったことがわかる。中でも「生」と「死」の二元的な欲動を追究した欲動論は、彼が最晩年に確信を抱くまでになったというだけに興味深い。かなり専門的な内容だが、訳者が紙幅を割き丁寧な解説をしているので、これからフロイトを学んでみようという人も比較的スムースに入っていけよう。
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By 倒錯委員長 トップ500レビュアー
形式:文庫
中山元の訳によるフロイトの文明論集第二弾。
今回は、いつの時代も世界のどこかで繰り返される悲劇「戦争」、そして人間として避けることのできない「死」についてのお話。収録されている論文は、フロイト全集や他の文庫にすでに収められているものだが、この光文社版、というよりも中山の訳は文体がやわらかく、現代の日本語に直されていてとにかく読みやすい。注も充実していて、続巻が楽しみになる。

最初のアインシュタインへの回答の文章と、その次の論文は書き上げられたのが第一次世界大戦勃発以降であり、フロイトは人類史上に残るこの大戦に相当ショックを受けていたことがわかる。人類全体に対して不信感を露わにしているといっても過言ではない。

もともと彼の精神分析は、人類の本源的な無垢性や道徳心を信じてはいない(幼児性欲の理論など)側面があったが、戦争の経験を経たことで、フロイトはこの当時特に人間の先天的な「善性」「道徳心」に対してかなりネガティブな見解を示している。それに加えて、彼の思想の転回点となった「快感原則の彼岸」におけるエロス以外の欲動(=破壊欲動)の発見も伴い、本書所収の論文「戦争と死に関する時評」では「戦争は廃絶することができないものである」(95p)という、かなりペシミスティックな結論を導き出している。

その他にも、本来欲動は利己的であるから、外部からの教化で利他的に振る舞うことができるようにはなっても、真の意味で利他的な人は少なく、ほとんどの人は利己的な欲動を満たすために表面上で利他的なっているだけであり、要するにみな偽善者だと喝破する(残念ながらそれを私たちがまっさきに否定できない、というのも悲しいことではあるが)。

「喪とメランコリー」では喪、すなわち他者との死別から、メランコリー(=鬱病)を考察する。主体が(相手の生死を問わず)愛する人を失うことは、リビドーの対象の喪失をも意味し、自我はその緊急事態に直面して、自らの一部を対象と「同一化」することで事態に対処しようとする。すなわち、自らの一部にリビドーを向けかえるわけだ。しかしそのとき、かつて対象に向けられていたそのリビドーはアンビヴァレント(愛しさと憎さが入り乱れた感情)なものであるから、新たにそれの対象となった自我の一部は苦しめられ、その結果として鬱病患者は特に自己評価が低くなるのだという。

これって失恋したら共感できる話だよね。
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10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By お気に召すまま トップ1000レビュアー
形式:文庫
第一次大戦の悲惨な体験は、「野蛮さを克服した文明人」というヨーロッパ人の誇りを打ち砕いた。フロイトもまた大戦に大きな衝撃を受けたが、彼のその経験は精神分析の理論を深化させた。「快感原則の彼岸」(1920)に登場した「死の欲動Todestriebe」という概念は、彼の弟子たちにもよく理解されなかった問題概念であるが、本書に収録された「戦争と死に関する時評」(1915) 「喪とメランコリー」(1917)「人はなぜ戦争をするのか」(1932) 等を読むと、フロイトが大戦をきっかけに死を深く考えたことが分かる。戦争は、家族や同国人など「愛する人々」だけでなく、敵兵という「憎むべき人々」の大量の死を体験させる。つまり、愛・憎しみ・死を一体のものとして経験させるのが戦争なのだ。フロイトは、愛と憎しみの両面をもつ「他者の死」を、自我の構造に内面化する。愛する者の死は我々に深い喪失感をもたらすが(喪に服し、鬱=メランコリーになる)、そこには対立する二つの契機が葛藤している。一つは、愛する者は私の所有物すなわち私の一部であるから、私の中で他者は生きているという、死を認めない気持ち。もう一つは、愛する他者といえども私の自由にならない絶対的なよそよそしさ=敵対性があり、その憎しみの契機ゆえに私は、彼/彼女の死を認め、望みさえする。「現代人は無意識のうちに愛する者の死を強く望んでいる」(p93)という驚くべき逆説。愛には必ず憎しみが含まれるというフロイトの洞察は、メラニー・クラインの登場を予感させる。
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