正直、読んでいて哀しくなってきた。柳田氏の衰えはここまで進行してしまっているのか、と。公害訴訟を題材とした国を相手にした訴訟の難しさ、であるとか、いくつかの部分については、納得できる部分があるのだが、全体を通すと、ただひたすらに「今の時代はいかん。昔は良かった」と言う懐古主義だけで書かれている書であり、しかも、殆ど、著者が思った、だから正しい、と言うつなぎ方で全く説得力が無い。
特にどうしようもないのが、ゲームやPCと言ったIT技術に関する部分。なぜにここまで著者がITを憎むのか理解に苦しむ。とにかく、IT批判のためならば、何でもあり、という状態である。
当時の小泉首相に、『脳内汚染』(岡田尊司著)とともに「学校からITを排除せよ!」と言う手紙を送ったことを自慢するのをはじめとして(この書は、岡田氏が自らの主張に都合の良いように、論文などを切り貼りして作ったものであり、極めて問題の多い書である)、『縦に書け!』(石川九楊著)の著者と意見が同じだから自分の意見は正しい、と言ってみたり(この本も、著者が思ったから正しい、だけで、IT批判をしている書。ゲーム脳も支持している)、社会調査として全く基準を満たしていない『いまどき中学生白書』(魚住絹代著)を元に「ITはこんなに悪いのだ」と話を展開したり、と滅茶苦茶である。また、著者は、少年犯罪の凶悪化・増加を前提として話を進めているが、これらも少し調べれば、一概に言うことができなくなるはずなのだが…
部分部分では同意できるところもある。だが、素人であってもちょっと調べればわかることも調べず、ただ、自分が思ったから正しい、という著者の姿勢には全く同意できない。
また、著者の行った「自分が思ったから正しい」という意見を政治に反映させよう、という行為は、著者の言う「人の痛みを感じる国家」の正反対にあるのではなかろうか?