人が人自身を再現する。それは著者が述べる通り、太古の昔からの根の深い人間の業なのかもしれない。そして現代において、その業の最先端に位置する分野は、ロボット工学だといえよう。本書は、ロボット工学の最先端を走る日本の著名な研究者6人の、少しずつ違った方向からのその「人を知る」営みを追う。
だが注意すべきは、人間を模造するというこの営みが、単なる科学者たちの知的傲慢、全てを知った者による人の支配という横暴ではないということ。人間は人間自体にまだ、謎を多く残す。人間を知っているからロボットを作るのではない。ロボットを人型に近づけることによって、未だ謎多き人間を理解しようとしているのだ。
ある人は人間の頭脳に宿るとされた知能を間主観的なコミュニケーションという場に解放し、ある人は触覚にこそ知性の原型はあると考え、ある人は芸術を愛でるという感性から人型ロボットという存在のあり方を模索する。人型ロボットを作る上でのその一人一人のアプローチはすこしづつ違うものの、興味深いのは彼らの誰もが、ロボット作りへの情熱のみならず、人間理解への情熱にも燃えているということだ。
アトムの完成は、残念ながら彼の誕生日(2003年4月7日)には間に合わなかった。しかし近い将来、空を自由に行き来する彼のような正義の味方が、ネットワーク上で悪人を追いかける草薙素子ばりの女性警官が、登場する日も僕らが生きているうちに来るかもしれない。そんな期待を抱かせてくれる一冊。