僕はオイルショックの年の生まれなのだけれど、縁あって田村隆一さんのファンになった。もちろん開高さんのファンでもある。開高作品は「日本三文オペラ」が好きだ。開高ファンとしては異端だろうと思う。
さて、この本は開高さんらしい「聞き書き」である。聞いて書いたもの、である。聞きながら自分もしゃべった、しゃべっているもの、である。聞き手はインタビュー対象の背景に退くべきかどうかはわからないが、開高さんはいつもの開高さんらしく饒舌に、酔いの回った醒めた目で話を聞き、誘い水を向け、語らせ、語り、記し、沈殿し、淡く消え残っていく。
どの節もいい。が、とりわけよく発酵しているのが詩人、田村隆一との交わりであると僕には感じられた。
玉に瑕は、佐野眞一の、お説ごもっともだが昭和40年代という時代風景への入れ込みと魂の入りがいまひとつ感じられない解説。解説とはそういうものだという説には、たとえば松本清張作品を解きほぐしていく平野謙の姿を反証として挙げておきたい。
書いてくれないと思うが、大江健三郎を配してくれていれば、そういう時代の書物として、一冊のバランスがとれて完結の度合いがより高まったことだろうと惜しまれる。開高本には、僕はついそこまで求めてしまう。