朝日新聞連載時から一部の人たちのあいだで話題だった佳品。お宝ブームのなか、1億総鑑定師的な様相に一石を投じる1冊かもしれない。
舞台は焼き物王国の九州。伊万里、有田、唐津をあげるまでもなく、かつて朝鮮半島から陶工たちを連れ帰って窯を開いて以来の歴史と伝統ある舞台で繰り広げられる古美術商い(文中では骨董屋)の話。まず、次々に登場する高額の品々に関する描写が見事。写真はもちろん図版さえないのにその美しさが切々と伝わってくる。かつて窯を開いていた場所から破片を掘り出す盗掘や修復師の話も興味深い。一見すると分厚さに驚くが、ユニークな登場人物のおりなすつましい生活が最後まで飽きさせない。
読み終えて、九州の「市」を訪れてみたくなり、魅力ある陶器に触れてみたくなることうけあい。とにかく「おもしろい小説」を読みたい人はぜひ!