頭山満と言えば「右翼の大物」「極右」としておどろおどろしい伝説の中にあり、映画や漫画など戦後の大衆文化における「右翼の大立者」のイメージの原型となっている。この本は、そのような通俗な「思いこみ」を、丹念な取材に基づいてさらりと修正する。
頭山満が生涯をかけて渾身の努力をしたのが、「日中和平」であったというたったひとつの「事実」をもってしても、いかに通俗なイメージが誤っていたかを示して余りある。なにより、淡々とした事実から描かれる頭山満ほかの玄洋社群像が魅力的だ。
中華民国総統として「凱旋訪日」した孫文を、玄洋社の人たちは「座布団もない冷畳」で迎える。孫文はかつての亡命時の貧窮の時と変わらぬ玄洋社の待遇に、かえって感激するのである。頭山と孫文の友情は生涯変わらなかった。