戦前期の京阪神におけるモダンなデザインのポスター、カタログ、パンフレット、しおり、チラシを筆者・橋爪紳也氏が長年にかけて収集し、それについて説明を加えたものです。カラーの頁もありますが、基本的には白黒です。それでも十分デザインの風変わりさと時代性は感じ取れるようになっています。
橋爪紳也氏は建築史・都市文化論研究者で、ユニークで貴重な著作を世に問うている方です。近年では、大阪市長選挙に出馬されたことで有名になりましたが、京阪神の近代の歩みを斬新な視点で調査し、検証していく手法は見事だと思います。
執筆されたテーマは、新案特許、暮らしの電化、ニュービジネス、郊外住宅、博覧会見物、百貨点、ファッションなど74項目に上ります。見開き2頁で一つのテーマについて記載するという形式を取っており、著者の博識ぶりと旺盛な好奇心に驚かされます。
主な記載事項を列挙しますと、特許新洗剤モノゲン、新案特許アンゼン錠、ネオンサイン、マツダ閃光電球、電熱利用文化台所、クリスチャン経営者、七面鳥飼養案内、電灯の下のモダン生活、阪神パークと阪神水族館、太湖汽船で島めぐり、菊人形二十場面の見流し、懸賞付き野球大会案内、「食い倒れ」の街のグルメマップ、世界服飾文化博覧会、四ツ橋文楽座、宝塚少女歌劇、古川緑波一座、ビルヂングホテル、など実にバラエティに富んでいます。
戦時中の空襲で過去の貴重な資料が灰となりました。実際ここに掲載されている建物や商品も現存していないものが多いわけで、それを今振り返るという意味合いも本書の出版にはあるように思います。眺めているだけで楽しい物ですし、記述も分かりやすく軽く読めてかつ知識欲を満たす好著だと感じました。