京都を40年間の長き間、撮り続けてきた名カメラマン・水野克比古氏がこれまで撮ってこられた写真の中でも特に芸術性を追い求めたような写真が目白押しで掲載してありました。A4変形サイズの横判ですので、大きさもまた魅力でしょう。
春はあけぼの「目覚めの刻/広沢池」、夏は夜「月冴ゆる/嵯峨野」、秋は夕暮れ「雲燃ゆる/金戒光明寺」、冬はつとめて「霧につつまれて/広沢池」から始まる京都の四季の美しさが見事に表現してありました。社寺仏閣の荘厳さを写すだけでなく、そこに潜む精神の深さを感じさせるような作品ばかりですし、幽玄の美を表しているような格調高い写真が詰まっています。
清少納言の「枕草子」は現代語訳と欧文が併記してありました。巻末にはそれぞれの写真の撮影地の欧文が記載してありますので、外国人の観光客にも喜ばれる内容になっています。
85ページの八坂の塔として有名な法観寺の五重塔と京都の街並みを俯瞰の構図で収めた「雪の暮れ/法観寺」は絶妙のタイミングとアングルでしょう。見事です。
隣のページの「雪降る/龍安寺」も観光客がいない時間帯に我々では入り込めないエリアからの撮影ですので、普段見慣れている雰囲気とは違うのもまたいいですね。
「堂上の月/金戒光明寺」では、開け放たれた本堂の扉の向こうに照らし出された仏様と本堂の上に光り輝く満月の写真には魅了されました。静けさを感じさせる闇と、ハッとするような光の対照が他では見られない美を創りだしています。
勿論、春や秋の写真も豊富で、「春惜しむ/平安神宮」の桃色に染まった地面とまだ花が残っている紅枝垂れ桜の構図や、ライトアップされているのにも関わらず人のいない永観堂の全景を撮った「錦秋/永観堂」など、プロの写真家ならではの作品が並びます。当然こんな見事な写真は撮れません。本書で観賞するのみでしょう。
「風は種々の色となって、私のカメラの中に宿り、写し止めた一枚の映像に、移ろいゆく季節の風が吹き渡るだろう。」という水野さんのコメントの重みと深さを感じました。