京の桜を撮り続けて40年のキャリアを誇っておられる水野克比古氏の最新作で、京都の桜の美しさ、ここに極れりとでも言うべき花の饗宴を集大成したような写真集です。
市内を中心に107ヵ所の名所や穴場に佇む桜を1頁ずつ紹介したもので、場所、拝観時間、見所、地図などの拝観データや交通アクセスが掲載されており、親切な編集になっています。サイズもハンディで、京の春を満喫するための桜のガイドブックとしては最適でしょう。どのページを開けてもため息がでるほど素晴らしいショットで埋め尽くされています。
冒頭に掲載されている本満寺の枝垂れ桜の枝と本堂を対比した写真から始まります。千本ゑんま堂の普賢象桜が花の形のまま庭に落花している風情は、侘び寂びの世界を感じさせるものでした。
また山科疎水べりの見事な染井吉野や、原谷苑での八重紅枝垂れ桜の乱舞とも言える饗宴ぶりは声も出ない美しさでした。
京都の春を彩る桜の奥深さや、まだまだ知らない桜の多さに愕然とします。名写真家のベストポジションとプロフェッショナルの感性があれば、かくも美しく艶やかに咲き誇った桜を捉えることができるという証明のような本でした。
妖艶な桜もあれば、可憐な桜もあります。散る桜に「もののあはれ」を感ずるようになりました。それだけ年をとった証拠なのかもしれません。落花盛んな桜を見ることで人生の深遠さに思いを馳せることもあります。日本人の感性と桜のマッチングは、ベストだと言えましょう。
桜好きの方や京都を愛する方には福音ともいえる写真集ですので、是非一度手に取ってみて欲しいと思っています。