この本は、単なる文具探しの本ではなく、京都の文房具店を通して、昭和の世相が見えてくる本です。夫が亡くなった後も、店を継いでいるおばあさん、廃校になった小学校の前で、店を続けているおばあさん、昭和のはじめ頃から店をやっている紙屋さん等、作者が店で、彼ら店主と世間話をしながら文具をさがす様子が、親しみやすい調子で書かれており(暗い話ではありません。)、そこで得た文具の戦利品は、それほどめずらしい物ではないのですが(レトロ文具に焦点をあてれば、「まだある」シリーズなどの方が、すぐれています)会話や、店の様子から、静かでおだやかな時間の流れと、人の暮らしが見えてきます。京都のある夏の話のようですが、セミの鳴き声や、暑い京都の町、交差点の信号機の音、など、皆聞こえてくるようで、その向こうに、自分が子供時代を過ごした、昭和が見えるような、不思議な感じがしました。