京都を撮り続けてきた名カメラマン・水野克比古氏による夜景の名所の写真集です。
冒頭の上京区にある善明院の紅枝垂桜と満月の写真から魅了されました。幽玄の美というのでしょうか、静けさとハッとするような光の対照が美を創りだしています。
写真ですから、取り上げられた被写体を披露しても問題ないので、思いつくままに列挙します。
善明院近くの水火天満宮の枝垂れ桜も隠れた名桜ですし、平野神社のぼんぼりに揺れる桜の風情も格別です。千本ゑんま堂の普賢象桜、退蔵院、京福電車北野線ライトアップ、佐野桜畑、平安神宮紅しだれコンサート、金戒光明寺、高瀬川、祇園白川など夜桜の美しさも本書で満喫できます。
八坂の塔として有名な法観寺の五重塔と石畳の風情も昼間とは違い、たおやかな顔を見せてくれます。最近定着した東山花灯路の二年坂、三寧坂も素晴らしい写真です。それにしても何時撮られたのでしょうね。このエリアで人のいない瞬間を狙うのは至難の業だと思います。
三室戸寺のあじさい、万福寺の蛍放生会、貴船神社の七夕祭、祇園祭の宵山における油天神山、下鴨神社のみたらし祭、三千院の万灯会、化野念仏寺の千灯供養、五山の送り火、嵐山の万灯流しなど、京都の季節感を感じさせる夜の行事を雰囲気よく写真として提示しています。
高台寺や金戒光明寺とお月さまの作品など、水野克比古氏の心象風景ともいえる凛とした美しさが伝わってきます。プロですから当たり前でしょうが、露出やシャッター・スピード、アングルなどまさしくお手本の作品です。当然こんな見事な写真は撮れません。本書で観賞するのみでしょう。