タイトルだけ見ると京都の庭園を案内したガイドブックかと思ってしまう。各庭の紹介の後には基本情報がまとめられており、ますますその感が強い。だが、だまされてはいけない。
そういう私も第三章までは気楽な少し詳しめのガイドブックかと思って読んでいた。しかし第四章で孤高の天才利休に招かれ待庵の露地から入ったその先にあったのは、自らを神格化し、相手を貶めようとする、秀吉対家康、徳川対天皇家の呪術的暗闘であった。秀吉との関係で語られる土木集団ワタリ、日本庭園の造園技術に革命をもたらした宣教師とそれを権力者と結びつけたキリシタン大名たち、陰陽道や密教の呪術技法を駆使する金地院崇伝、忍従不屈の後水尾天皇と優れているが故に不遇をかこつ智仁親王、そして西洋造庭術を完全に身につけ和魂洋才よろしく日本庭園にその技法を注ぎ込む小堀遠州。著者はこれらの登場人物を最新の科学調査の結果と大胆な仮説でドラマを描き出してゆく。このドラマでの庭園は単なる壮麗な舞台装置にとどまらず、神格化の象徴でありそれ自体が重要な役割を担ったものである。いわば、歴史ドラマを借景とし庭園自体に込められたイデアやエゴを際だたせる演出がなされていると言うべきなのだろう。