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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
『音』を生きる、『言葉』を生きる,
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レビュー対象商品: 交響曲第一番 (単行本)
人が生きるとはどういう意味なのだろう、そして何のために生きるのだろうか。少なくとも1つの事実として人生を受け止めるならば著者の辿る足跡は余りにも重い。或る日、突然にして、音楽家がその最も大切な拠り所の1つである『音』を喪ったとしたら、もし自分がその立場にあったなら、どうするか。それだけを考えながら最後までページをめくった。実際、17年前にストレスと過労から私は右の聴覚を失った。2度と元に戻ることはない。その日以後、私が考えてきたことは耳から聴くことだけが『音』ではない。相手の言葉やその思いをどこまで受け止めることができるかが『音』の意味だと理解するに至った。無論そこには音楽家とエンジニアという立場の違いはあるかもしれない。けれど音という手だてを通じ、その向こうにいる人達の表情を思い浮かべての仕事、という点では共通する。絶望の中、著者の周りには手を差し伸べ、言葉を交わす人々がいた。人間が社会の中で生きて行くには一人で生きていくことなど到底不可能なことであり、著者は作品を通じて自らの人生を生ききることを物静かに語っている。絶望を知る者だからこそ人間に向けられた彼の眼差しは優しく、そして返ってくる眼差しも優しい。相手の痛みを自らの痛みとして受け止めることができれば、世の中はもう少し真っ当になるだろうな。そんな思いを抱きつつ最後のページを読み終え表紙を閉じた時に頭に浮かんだメロディーはマーラーの『巨人』だった。尚、「下手すればお涙頂戴」との言葉は余りにも皮相的、そして想像力に欠けた言葉であり、自らの人生を粗末にしている哀れと言わざるを得ない。
21 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
与えられた運命を生きるとは,
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レビュー対象商品: 交響曲第一番 (単行本)
もし自分がある日突然、耳が聞こえなくなったらと考えてみました。周りの音が何も聞こえない、誰とも会話ができない・・・ はたして正気を保っていられるかどうか想像すらつきません。 ましてや著者は作曲家。その喪失感の深さや内なる葛藤は本人以外知り得ないと思います。 著者は幼少時から愚直なまでに音楽を追究していきます。 彼の生き方はややもすると衝動的かつ不器用で、ときに可笑しさも誘い、 そこがまた人間的な魅力のように映ります。一方では、大切なものを次々と失い、 やがては聴覚を奪われ、激しい発作に襲われ、絶望の底に沈んでいきます。 決して明るいお話ではありません。 それでも救われるのは、いつも周りに支えてくれる人が現れることです。 最も身近な家族をはじめ、友人であったり、仕事仲間であったり、障害を持つ子供たちであったり・・・。 そうした他者との繋がりがいかに一人の人間に希望を与え、 「生かす」かということを感じさせられました。 そして、音を失っても著者が作曲を続けることができ、 念願の交響曲を完成させられたことに何より救われました。 確かに本書には、胸が詰まるような哀しい出来事や壮絶な場面もあります。 しかしそれよりも、与えられた運命と対峙していくとはどういうことか、 生きていくとはどういうことかを著者が身をもって伝えているように感じました。 この本は奥が深い。。。と思いました。
19 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
鳥肌たちまくり,
By yummy (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 交響曲第一番 (単行本)
めったに本をすすめない友達が「面白いよ」とすすめてくれたので、手にとってみた1冊。正直、クラシックにもオーケストラにもほとんど興味がなかったのだけど、 ある日突然、聴力を失ってしまう「運命の瞬間」から始まる冒頭からぐいぐい引き込まれ、そのまま一気読み。 幼い頃から貪るようにピアノを習い、尋常じゃない熱情で音楽に没頭していく主人公。 音楽やるからには素直でおとなしい男の子かと思いきや、学生時代はかなりやんちゃ。 音楽大学に行ってヘンな人間関係に巻き込まれるのが嫌だと、音大に進まず独学で音楽を極めていったり やることなすことが型破りで荒々しく、半端じゃないアウトロー人生にまず惹かれる。 実力はあるのに、あえて王道を進まなかった彼の行く先は困難だらけ。 そして、交響曲を作曲するという夢が強くなればなるほど、原因不明の耳鳴りが日増しに彼を苦しめていく。 そして・・・やってきた運命の時。 音楽への情熱と狂気、最も失いたくないものを失った時の絶望、原爆症という見えない恐怖・・・ 絶望の中で、命を削るように作曲活動に没頭する主人公の姿は壮絶の一言で、 昔の人ならともかく、同じ時代にこんな生き方をしている人がいるのか、と素直に驚きました。 でも、ただただ暗い話というだけじゃなく、彼の愛嬌あるパーソナリティに時に笑わされることも。 謎の少女「しお」の無垢な存在感にも何度も救われました。 ただの音楽ものでも手記でもない、壮大なドラマにただただ鳥肌です。
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