前作『交渉人』に比べると、純粋サスペンスとして、ずっと面白い小説。★4個でもいいのだが、現実に起こったテロ事件などをモデルにしている点で、ちょっと安っぽい感じがしたので(設定として借りるだけならまだしも、解決方法にも絡んで来る所は疑問だったし)、減点1にした。この作者なら、完全オリジナルの設定でも十分書ける力があると思うけどね。
あえて難を言えば、犯人との交渉という要素が弱いとは思う。お互い一方通行のメールを発信しているだけで、息づまる駆け引き、というような感じはない。
五十嵐貴久は、私は半分も読んでいないけど、一作ごとに全然違う題材、作風に挑戦し、しかも一定以上のレベルを保っている、そういう多才な作家、という定評は聞いているし、実際、発表された作品群を見ると、『リカ』、『安政五年の大脱走』、『Fake』、『2005年のロケットボーイズ』、『パパとムスメの7日間』…、と題名だけ見ても、実に幅広い。
そういう意味では、前作『交渉人』がベストセラーだったとはいえ、その続編を書くことは、作者として複雑な心境だったのかなあ、と想像してしまう。
内容的には、どうして「最後の事件」なのか、よくわからないのだが、作者としては、第3作は書かないよ、という読者へのメッセージなのか? まあ、シャーロック・ホームズだって「最後の事件」の後で復活したのだから、作者がその気になったら続編を書いてほしい。読者としては気長に待つとしよう。