ユーモア・ミステリ「烏賊川市シリーズ」第4作。ヒット、内野安打、フォアボールと来て今回は場外満塁本塁打である。
××トリックを用いたミステリは少なくないが、本作の凄さは3パターンを同時使用しているところ。これはまず見抜けない。クライマックスで途方もないドンデン返しが炸裂する際の、雪山でのドタバタによる映像効果も面白く、この道の名手逢坂剛ですら、これほど驚かされた記憶はない。
とにかく全編にびっしりと伏線が埋め込まれていて、目も眩むようなつるべ打ちでそれらを回収していく解決篇は、快感の一語に尽きる。ギャグやキャラクター造形は例によってベタだが笑わせ度は格段にアップしており、とにかく楽しく読めた。ヒロインがすばらしく独創的で、謎解きの最中に着替え出す場面など、古今東西ミステリ史上最高に笑えるギャグではないだろうか。トータルで日本ミステリ史ベストワンとまでは云わないが、同点ベストファイブぐらいには入れたい。
あまりに手が込んだ小説なので、あっさり好みで煩わしく感じる人もいるかも知れない。が、明朗で後味がよく、たっぷり笑えて、しかも騙される快感をとことん堪能させてくれる逸品。華麗な大花火を楽しむようなひと時が過ごせること受けあいだ。