サブプライムローン問題や秋葉原通り魔事件を思わせる衝撃的な出来事。
ネットカフェ難民や若年雇用問題などを通して、
若者達が何に癒され、救いを求めるのかを問いかけた作品です。
過激で衝撃的な展開も、「もしかしたら本当に起こってしまうかも?」と
現実と虚構の境がぼやけてしまいそうな危うさを感じます。
「警察」「政治」「宗教」など人の集合体として見ず、
大雑把に括ればすべて胡散臭く見えるもの同士が絡み合うことで、
全てが汚い物に見え、嫌悪感を抱いてしまう事が切ない。
登場する新興宗教の中心人物の2人の比較が面白い。
神島は宗教を洗脳ととらえ、信者の生命を徹底的に軽視するのに対し、
真央は宗教で苦しみを取り除き、癒しを与えて信者に生きろと説く。
しかし「宗教」を集合体として見ざるを得ない「警察」にとって
2人の違いなど関係なく恐ろしい危険な集合体と化す。
同じような行き違いは他にもあり、事件解決のため奔走する金子ら「警察」も、
悪意を持ったマスコミの目を通せば公権力を振りかざす悪しき集合体と映る。
ではテロ集団と化した若者達をどういう風に捉えていくのか?
掛け違えたボタンのようになった問題を多く浮き彫りにした小説と感じた。
単に死や破壊へと突き進む絶望が待つ結末かと思いきや、
後半繰り返される「何があっても生きろ」というメッセージは
若い人たちへ対する著者の願いの代弁のように聞こえてくる。
最後に翔太と真央の愛情は変わらず美しく清らかであることに救われる思いがした。
20代から30代の青年層にぜひ読んでもらいたいと思った。