名探偵名鑑が編まれた時に(五十音順で)最初に
くるようにと命名された本作の探偵役・亜愛一郎。
雲や虫、化石などを専門に撮影するカメラマンである亜愛一郎は、その眉目秀麗な
外見にそぐわないドジな振舞いを連発するとぼけた人物として造形されていますが、
誰よりも早く事件の存在に気づき、真相を見抜く観察力と推理力も備えた好漢です。
ミステリとしては、奇妙な謎や風変わりな状況が示された後、それについて天啓が
閃いた――「白目をむく」というアクションをする――亜が、謎解きを披露する ――
というのが基本パターンで、まず意外な真相が明かされてから、亜がそこに到るまで
の思考のプロセスが開示されるといった構成が採られています。
その際に展開される読者の意表を突くチェスタトンばりの逆説的ロジックは、
ときに非現実的なものになる恐れもありますが、それに説得力を付与すべく、
全編に亘ってさりげなく数多くの伏線が張り巡らされています。
読者は、亜の謎解きによって、あれもこれも伏線だった
のかと気づかされ、必ずや驚嘆させられることでしょう。
シリーズの掉尾を飾る本作では、亜の驚愕の出自だけでなく、彼の行く先に必ず現れる
不思議な人物――三角形の顔をした洋装の老婦人――の正体が遂に明らかになります。
※収録された短編の内容については「コメント」をご参照ください。