冒頭の井上ひさしのエッセイにすべての思いが込められていました。「大連は夢の都」というタイトルそのものが当時の日本人の認識だったのです。
戦前の日本は、満州を支配することよって国内問題も紛争処理も解決を図ろうとしていました。それらの国策にも乗って、「夢の都」であるべき大連は、素晴らしい西洋風の建造物を擁する東洋のパリとも称えられる美しい都市へと変貌していきました。
日清・日露戦争で得られた大連は、もともとダーリニーという名でしたが、日本の支配とともに満鉄のヤマトホテルや満鉄病院の建造物群に代表されるような権威の象徴として威厳ある街作りが行なわれたわけです。
本書では、当時の貴重な写真を沢山使用しながら、大陸の起点すなわち満州の表玄関ともいえる大連の発展過程をつぶさに眺めることができました。
本書の後半は、奉天、新京、ハルビンという旧「満州国」の主要都市を写真と地図も収録されていました。
敗戦とともに多くの日本人が命からがら引き揚げて来て祖国日本との接点になったのもまた大連でした。この都市の歴史を知ることは、戦前・戦中史の理解に欠かすことはできません。