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五・一五事件―橘孝三郎と愛郷塾の軌跡 (中公文庫)
 
 

五・一五事件―橘孝三郎と愛郷塾の軌跡 (中公文庫) [文庫]

保阪 正康
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

五・一五事件は軍国主義の幕開けになり、日本ファシズムの導火線となったとされる。単なるテロ事件に終始せず、多くの農民が実行犯の減刑を嘆願した事件の背景には、注目すべき“大衆”の情緒があった。人道主義の系列にあった橘孝三郎と愛郷塾が、五・一五事件と結びついたのはなぜか。本人への取材に基づき、歴史を変えた大事件を検証する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

保阪 正康
1939年12月札幌市生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。評論家、ノンフィクション作家。出版社勤務を経て著述活動に入る。主に近代史(特に昭和史)の事件、事象、人物に題材を求め、延べ四千人の人々に聞き書きを行い、ノンフィクション、評論、評伝などの作品のほか、社会的観点からの医学、医療に関する作品を発表している。現在、個人誌『昭和史講座』を主宰。2004年菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 443ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2009/07)
  • ISBN-10: 4122051819
  • ISBN-13: 978-4122051812
  • 発売日: 2009/07
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.8 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫|Amazonが確認した購入
 場面や状況、心情の描写や分析が、全編にわたり丹念に書かれており、どの一文からも今に通じる示唆を得られるような、知見に満ちた頭の下がる一冊です。
 昭和二年の金融パニック後に誕生した独占金融資本。一方で中間層の没落と地域社会の衰退が生み出す貧困。
 農村の疲弊とともに資本への憎悪が高まる中、闘争的な講演が聴衆を引きつけて革命的なというか、革命を容認する社会的状況の根底をなしてゆきましたが、テロリズムを可能にする社会状況は、更に農村有力者、軍部から積み重ねられるなかで決定的に醸成されてゆきます。
 昭和四年のロンドン軍縮会議を契機とした軍部の政治介入。軍部内での団体結成と民間革命分子との合流。昭和六年、八年のクーデター未遂事件、昭和五年浜口首相狙撃事件、昭和七年の血盟団事件と五・一五事件、そして昭和十一年の二・二六事件へと革命とテロリズムの機運は、どんどん正統性を得て高まっていったのです。そのあたりの歴史的なダイナミズムが臨場感あふれる筆致で理解できるでしょう。
 その頃、窮乏する民衆は食い扶持のために入隊し、手当ても充実した大陸へ送り込まれるていきます(このあたりはイラク戦争と米軍の関係に似ています。日本軍は恩給がありますが、米兵は単に捨てられているという違いはありますが。)。社会的状況を活用しながら軍部が着々と体制を固めつつ、テロリズムへと先鋭化したエネルギーは、社会改革を完成させることなく、ついには戦争への重要な布石として掠め取られてしまいました。

 農村の疲弊と財閥への憎悪。政党政治や統治システムへの絶望と決起。そういった「革命的=直線的状況認識」。それは本書の与える大変重要な示唆でしょう。

 革命的状況認識、あるいは実行型の人間を選抜して指令を出すといった結社と行動の原理は「オウム事件」に対する示唆も与えてくれます。
 民衆に気づかせたい、救いたいという思い(ただしその認識は資本の集積と貧困により生み出されたのではなく、宗教的原理、個人的精神史、軽薄な社会状況への反発といったものよってもたらされたものと思いますが)。だが、民衆は自分たちを笑っているというオウム的認識が加わることによって「決行」は行われたのです。テロの対象は財閥や政党ではなく民衆自身でした。

 いづれにせよ「直線的認識」を生み出す社会状況という意味では、今もあまり変わってないんじゃないかと思います。人々は貧困に苛まれ、憎悪は高まっています。
 著者があとがきに言う、「暴力の底位をなす憎悪にとらわれ」た者たちは一度頭を冷やすためにも読んだほうが良いでしょう。結局革命なんてできないんだな、テロなんて誰かに利用されてしまうんだなというのが率直な感想です。
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形式:文庫
 月並みなエリートコースが約束された人生を敢えて放棄し、若さゆえの苦悩から数々の哲学を経験した結果、「土」に還ることこそがが最も『自然』に適った生き方だと悟り、故郷の水戸へ帰って帰農した主人公・橘孝三郎。工業化され個々人が分断化された都市生活をアンチテーゼとして、「家族」「兄弟」を基礎にした『農』を中核とする「理想社会」を構築しようとした。『まごころ』という極めてモラリスティックななモットーを常に旨とし、学問と自己研鑚に励み、農村における社会改良活動に邁進する主人公と弟子達。そこには一点の曇りもない純粋な「魂」の持ち主である彼らの人間性が垣間見える。
 恐慌による農村の疲弊を憂いて、都市中心の資本主義に対して強烈な問題意識を抱く主人公。同じ意識を持つ軍人達との関わりもあるが、主人公はテロによる「破壊」よりも、あくまでもその後の『建設』に重きを置いていた。そう、「農」中心である理想社会の『建設』にである。
 
 五・一五事件は軍人達による要人達へのテロ行為であったが、当該事件において主人公の思想や意図が本質的な部分に潜んでいるのだろうか?と筆者は書く。そもそも自然的で人間的な「農本主義」が何故テロに走る必然性が在ったのか?私にも解らない「謎」である。
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