ファニーでエキセントリックな唄法から、どちらかというとキワモノと見ていた二階堂和美が、オーソドックスな歌モノを作ったというわけで、なんとなくこれはキテる気がしたので、試聴もせずに購入。イルリメが作詞や作曲にも参加しており、オーソドックスとはいっても、彼と二階堂が組んだ作品が、一筋縄で行く筈もないと踏んでいた。ところが大きな期待を胸にプレイを押すと、なるほどスタンダードと呼んでもよいような緩やかで美しい曲が流れ出る。その音楽は、とても日本的なメロディで、二階堂の歌声も実にナチュラルで素朴なものだった。実際、そういう触れ込みを見て、手に取ったのだから、まさにその通りのものだったのだが、表面上には現れない新機軸を期待していた自分としては、ちょっと肩透かしをくらった感じがした。途中、笠置シズ子のカバーや、いかにもイルリメ的なリリックもあるのだが、やはりトータルではものすごく真っ当で、これは予想していたものとは、少々違うなと思った。
そして、僕はこれを聴いたあと、TVで懐かしのメロディの歌番組を見た。そこには、本当の日本の歌のルーツとも言える服部良一や古賀政男メロディなど僕の生まれる前の日本の流行歌が次々と登場した。生まれてもいなかったのに、なぜか見ている内に懐かしい気持ちになっていた。
今、「二階堂和美のアルバム」を再度聴いている。あれっと思った。一回目聴いたときに新鮮に思われなかったメロディや歌が、妙にすんなりと気持ちよく聴こえたからだ。そこには、最近忘れかけていた歌があった。音楽として聴くのではなく、歌として聴こえたとき、それは自分の中に優しく力強くそして美しく浸透していく感じだった。本来ヴォイスパフォーマー的な彼女が、こんなにも素朴になって歌っている様子は、歌そのものに同化していく感じで、優しさに満ち溢れていた。