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「二重人格」というタイトルのため、「ジキル博士とハイド氏」のように、一人の人物がまったく違った二つの性格を持つ物語なのかと誤解してしまいますが、原題は「ドッペルゲンガー」なので、そのままのタイトルにするか、訳すのであれば「幻影」や「幻覚」といったタイトルのほうが内容に近かったように思われます。ゴリャートキンの別人格、ではなく、彼が造りだしてしまった幻影として読まないと本意がつかめません。
ゴリャートキン氏が自己イメージと現実のギャップに苦悩するあまり、自分がありたいと願う自己イメージの投影が、意識をもって勝手に動き出してしまったというところでしょう。ゴリャートカというのは、ロシア語で「はだか」という意味だそうですが、自分の弱さが剥きだしのゴリャートキン氏と、きっちり社会性という仮面を付けたその他の登場人物の対比は鮮やかです。とくに救いのようなものを設定せず、ただ読者を突き放すやり方は、読者に自分自身を省みるきっかけを与えているのではないでしょうか。
実り多い作家生活を送ったドストエフスキーの第二作ですが、すでにその卓越した人間観察眼は如何なく発揮されています。ドストエフスキー自身はこの作品に大変な愛着を感じていたそうですが、残念ながら他の壮大な作品群に比べると、どこか奥行きに欠ける作品のように感じました。
他人と自分を意識しすぎたあまりに閉鎖的になってしまえば、人の態度がどんどん捻じ曲げられたものになって行く気さえする。作り出してしまったもう一人の人格が、更に主人公を苦しめるさまは、自意識過剰な人間の行き着く道のような気がして、心のどこかで恐怖を感じてしまう。心理的な作品です!
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