物語の主人公は、小説家を父にもつ3人のきょうだい。養護学校に通う長男で18歳の真木は音楽に並々ならぬ才能を発揮し、中学2年生の長女あかりはそんな兄を大切に思い、中学1年生の朔は抜群の行動力と思考力で兄と姉をサポートする。彼ら「三人組」は、父の生まれ故郷の四国の森に伝わる「童子」と呼ばれる特別な子どもが、地元の人が「千年スダジイ」と呼ぶシイの木のうろの中に入って行きたい場所をねがいながら眠ると、その場所に行くことができるという言い伝えを耳にする。彼らは夏休みのあいだ「森の家」に滞在し、父の友人であるムー小父さんの助けを得て、去年亡くなった祖母に会いに行くためにうろの中で眠る。
「三人組」は真木と心通わせる柴犬の「ベーコン」に導かれながら、120年前に村の危機を救ったメイスケさんや、103年前のアメリカで生活する日本初の女子留学生に会いに行く。旅の最後に「三人組」が選んだのは、2064年の未来。そこで彼らは驚くべき光景を目にすることになる。
1864年から2064年の200年の時空を行き来する「三人組」の行動を通して描かれるのは、過去と未来を規定する「いま・ここ」の重要性だ。過去はいまにつながり、未来はいまに溶け込んでいる。過去、現在、未来というひと続きの歴史的連続性の中に、想像力を駆使して積極的に自身を位置づけてみること。そこから、個人と歴史の新しい関係がかたちづくられる。大江はそのような人間を、若い世代への呼びかけと期待を込めて「新しい人」と定義する。自由な精神で「未来」につながろうとする子どもたちをめぐる物語は、和解と共存に根ざした新しい歴史認識を読者にもたらすことになるだろう。
ファンタジーと銘打たれてはいるが、これまで大江が発表してきた作品群の中で提示された固有名やプロットが随所に織りこまれている。その意味で、大江文学のエッセンスとして読むことができる作品でもある。(榎本正樹)
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なんと書けばいいのか‥。とにかく面白い本です。
将来に不安が募り,どうしようもなくなるのは分かるけれど,... 続きを読む
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