二宮金次郎は、今では子供どころか、大人もほとんどその事蹟を知らない。しかし、日本の歴史上、庶民・農民として最も偉大な人物の一人といってもよい。「報徳記」「二宮翁夜話」などの訳本を読んでもよいが、なんといっても読み応えがあるのは、少年時代の、想像を絶する苦難、すなわち、両親の死、洪水による田畑の壊滅、弟たちの離散、叔父方への居候というどん底の時代から、工夫と勤勉を重ねて蓄財し、独立し、たちまち二宮家を再興して大地主になっていく青年時代であり、後半生の農村再興に対する無私の奉仕活動と併せて、その生き様の迫力は、昔の農民にとっていかに痛快なヒーローだったかと思う。昔の日本の「農民魂」の最良の部分を味わう伝記として、二宮金次郎は追随を許さない。この漫画は子供にも非常にわかりやすいため、おすすめである。
2,3代もさかのぼれば殆どの日本人は農家に生まれている。祖父の代までいけば、二宮金次郎の事蹟は、目の前の苛酷な現実でもあった。にもかかわらず、すでにとうに失われた記憶でもある。