イエス=キリストから始まって初代教皇ペテロ、アシジのフランシスコ、リジューの聖テレーズ、フランシスコ・ザビエル、ジャンヌ・ダルクやマルティン・ルター、そして近代の無教会派の内村鑑三氏や新渡戸稲造氏まで、実に多彩なキリスト教偉人伝である。
著者は現代における霊的指導者ではあるがキリスト者ではないのでそれぞれの偉人の霊性にまで深く踏み込むことは出来ないにしても、キリストを血肉として激しく生きた人々の生きざまを、一般向けにやさしく紹介している点はおおいに評価できる。
とはいえ、やはり若干の物足りなさは否めない。イエスが復活後にペテロに対して発したかの有名な問いかけ、「わたしを愛しているか」。これはイエスが捕縛された後ペテロが三度主を知らないと否んだことに呼応する三度にわたる主の問いかけで、これによりペテロが信仰を強くされる重要な場面なのだが、ここには書かれていない。また聖フランシスコのあまりにも有名な「平和の祈り」は非キリスト教徒の心にも訴えかける非常に美しい祈りなのだが、紹介されていないのは至極残念。そして聖テレーズにおいては、彼女の深く激しい霊性は死後に起こったおびただしい数の奇跡と切っても切り離せないと思うのだが、その奇跡に関しては全く触れられていない。どの話も今一歩踏み込みが足りないように思ってしまうのは、贅沢というものか・・。
それでも、キリスト教にあまりなじみのない人がさらりと読めるだろう好著だとは思う。