この本を文庫本で最初に読んだのは,今から30年ぐらい前だったでしょうか。一気に読んでしまい,とても哀しく,切ない気持ちになったのを覚えています。今回の新装版は,当時の時代背景を理解しやすくするために,日記にでてくる言葉の脚注を付し,著者が遺した大学ノートの体裁をあしらって,横書きの文字デザインにして,ずいぶんと読みやすくなっています。巻頭にある著者の笑顔の写真も印象的です。
当時ベストセラーとも言われましたが,この本を反響を,著者自らは知ることはありません。著者は20歳の大学生で,京都の下宿近くで貨物列車に飛び込んで亡くなられてしまいました。彼女の死後,下宿に遺された日記の一部がこの本になりました。生きておられれば,60歳の還暦です。それでも,「二十歳の原点」は,今でもその文体が瑞々しく,詩的なリズムでぐいぐいと心の襞に触れてきます。「『独りであること』,『未熟であること』,これが私の二十歳の原点である」は,背景こそ違え,今でも多くの同世代の「原点」に違いありません。確かに,純粋すぎたからかもしれません。それでも生きていてほしかった。もっと自分以外の言葉にも心を開いていたら,そして自分を締め付けない言葉と,もっとたくさんの出会っていたら,『独りであること』から,『未熟であること』から逃れる出口が見いだせたのではないかと,その若すぎる自死が惜しまれてなりません。今回の新装版には,文庫本にはなかった,著者の父親(故人)の『失格者の弁』が掲載されています。今やその当時の父親と同年齢になり,ちょうど著者と同じぐらいの娘を持つ者としては,身につまされる話です。
20歳の人にも,そんな娘を持つ父親にも,是非手にとってもらいたい本です。