その道の傑物、達人と比べて、知名度では劣るけれど、彼らに劣らぬ情熱を注ぎ、個性的な生き方を貫いた人たち。そんな隠れた異才、十五人の人生を、印象的なエピソードを中心に綴った人物評伝コラム集です。
本文庫に取り上げられた十五人は、次のとおり。 ■大上宇市(おおうえ ういち)・・・・もうひとりの熊楠 ■島 成園(しま せいえん)・・・・松園のライバル ■モラエス・・・・ハーンにならない ■中谷巳次郎(なかや みじろう)・・・・無口な魯山人 ■西川義方(にしかわ よしかた)・・・・天皇のおそばで ■高頭 式(たかとう しょく)・・・・先ズ照ラス最高ノ山 ■秦 豊吉(はた とよきち)・・・・鴎外の双曲線 ■魚谷常吉(うおたに つねきち)・・・・包丁とペンと ■篁 牛人(たかむら ぎゅうじん)・・・・志功を見返す ■尾形亀之助(おがた かめのすけ)・・・・賢治の隣人 ■福田蘭童(ふくだ らんどう)・・・・尺八と釣り竿 ■小野忠重(おの ただしげ)・・・・版の人 ■中尾佐助(なかお さすけ)・・・・種から胃袋まで ■早川良一郎(はやかわ りょういちろう)・・・・けむりのゆくえ ■橋爪四郎(はしづめ しろう)・・・・もうひとりのトビウオ
なかでも、明治31年に来日、神戸から徳島へと移り住んだポルトガル人・ヴェンセスラオ・デ・モラエスの人となりが魅力的でしたね。彼が、徳島は伊賀町の田舎の通りを歩く自分自身をコミカルに描いた文章が、不思議な優しさをたたえて輝いていました。
ひとつ残念に思ったのは、その人物にまつわる写真や図版の掲載が少なかったこと。彼ら異才たちの風貌を今に伝える写真を見てみたい、そんな気持ちが強くしたものですから。