京都で思いがけず再会した高校時代の同級生、葛見百合子と二宮良明。
しかし、それが悲劇の幕開けだった――。
世田谷のマンションで、OLの清原奈津美が顔を焼かれて殺される。
重要参考人として手配されたのは、高校からの親友で同居人である
葛見百合子。
被害者の胃から摘出された鍵が、彼女の日記のものだと判明したため、
その日記の探索が行われるが、今度は、容疑者である百合子が京都の
浄水場で死体となって発見され……。
本作では時折、「きみ」という珍しい二人称の語りが挿入されます。
しかし、それはけっして奇を衒ったものではなく、ミステリのトリックや
作品のテーマと緊密に連関した、必然性のある趣向となっています。
「きみ」と呼びかけている語り手の正体にはタイトルの『二』に基づく、
いかにもミステリ的なガジェットが用いられているわけですが、その
仕掛けに読者の意識を向けないように提示される、百合子と奈津美の
卒業写真が校正ミスのため入れ替わっていたという設定が素晴らしい。
この『二』つのトリックの相乗効果により、読者は事件の全貌を把握できず、
宙吊りにされたままの状態で、結末を迎えざるを得なくなっているのです。
荒井由美
「卒業写真」を通奏低音に展開される本作は、切ない純愛小説である
と同時に、本当の自分を希求しながらも、虚構の仮面を被って物語を演じること
でしか、他者と向き合えない、ある『二』人の人間の悲劇でもあるといえます。