本書は、弁護士、法学者、社会学者がコラボして作り出した「ジェンダーと法実践」に
関する理論と実践を学べる贅沢なテキストである。
主に法曹養成を目的にしたテキストのようだが、法曹を目指していなくても
ジェンダーに関心のある大学生・院生や、近年世間を騒がせた民法の問題
(無国籍問題)等についてマスコミが提供する情報だけではなく独自にもっと深く
考えてみたいと思う一般の方、さらに裁判員制度導入によって法や裁判過程に
関心を持ち、特にジェンダーの視点から考えてみたいと思う一般の方にも
お勧めである。
(ただし、弁護士が書いている第4〜9章については、法実践とは
無縁の一般読者にはよくわからないものかもしれない。)
本書の良い点は、実践だけではないということである。
ただでさえ法実践というものは(特に一般読者には)わかりにくいものだが、
そうした「法実践にジェンダーバイアスが見られる」とただ言われてしまうと、
さらにわからなくなる。
だが、このテキストには、ジェンダーを専門とする法学者や社会学者による
とてもわかりやすい、ジェンダーバイアスに関する理論的な解説が付されており、
これにもとづいて現在の法実践のジェンダーバイアス問題を理解していけるように
工夫されている。
裁判員制度が導入され、一般の方もこれまで以上に法について考える市民的責任が
出てきたわけだが、ジェンダーという視点から法実践について考えさせてくれる
数少ない本でもあり、本書はその意味でも貴重である。
最後に、本書に関する比企俊太郎さんのレビューについて少しだけ触れておきたい。
端的に、比企さんのレビューは、やや感情的過ぎて公平性に欠けるように思える。
恐らく、比企さんは、日本の法律には性別役割分業を前提としたところが多々あり、
その部分を変えていかなくてはならないのに、このテキストの筆者(弁護士)たちは
そうした法律を(肯定して)使った実践を語っていてけしからん、これでは
性別役割分業の固定化につながってしまうではないか、と言いたいのであろう。
比企さんは、性別役割分業を前提とした現行の法律の問題点を知りたかったのだろうし、
また、ジェンダーバイアスの無い法律に作り替えなくてはならない、といった内容を
読みたかったのだろう。その気持ちはわからなくもない。
だが、このテキストがそもそも法曹養成目的で作られていることを考えれば、
比企さんの期待はわがままでしかない――法曹養成を目的にしたテキストが、
現行の法律を全面否定するというのは、むしろ滑稽であろう。
自分が読みたかったものを読めなかったから星1つというのは、あまりにも
大人げないと思うのだが、いかがだろうか。
もっと冷静に本書の目的、意義を評価すべきだろう。