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事の次第 (小学館文庫)
 
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事の次第 (小学館文庫) [文庫]

佐藤 正午
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商品の説明

内容説明

7つの物語が精妙巧緻にリンクする連作短編

今年四十歳になるタクシーの運転手、武上英夫は妻に言えない秘密を三つ持っていた。五年前、放火事件が起こった冬の夜にタクシーに乗せた女との経緯もその一つだった。彼に内緒で定額貯金を積み立てている妻にもまた、結婚前に付き合っていた危険な男との過去があり、五年前の冬の夜に武上英夫のタクシーに乗った女には、妻子ある山田宗雄との短い恋があった。山田宗雄が働く新聞社で記者を務める七種歩は妻のまゆみの浮気に気づき、まゆみとは高校時代の同級生だった有坂弓子は三十五歳になっても結婚できないのは妹のせいだと密かに思っていた。有坂弓子と交際中の竹中昭彦には事故で失った双子の弟がいたが、それを彼女に打ち明けていなかった。
そして街の裏社会に生きる“少年”倉田健次郎は雨の夜、武上英夫のタクシーに乗り込み――。ひとつの街を舞台に炙り出されていく、夫婦の関係、恋人の関係、不倫の関係、一晩かぎりの関係、過去の関係……。それぞれの事情を抱えた男と女が、それぞれの人生の境界線に直面したときに生まれる“事の次第”を巧みに描き出し、交錯し連鎖していく至極の小説集。表題作のほか「寝るかもしれない」「姉の悲しみ」「七分間」など、全七篇所収。

【編集担当からのおすすめ情報】
連作小説としても、一本ずつの短篇小説としても、巧みな語りを存分に楽しめます。
読後にはもう一度ページをめくりたくなる、佐藤正午さんの小説的エッセンスが凝縮された作品です。
以前、「バニシングポイント」として刊行された本を改題した、リニューアル文庫です。

登録情報

  • 文庫: 285ページ
  • 出版社: 小学館 (2011/9/6)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4094086455
  • ISBN-13: 978-4094086454
  • 発売日: 2011/9/6
  • 商品の寸法: 15 x 10.8 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By yukkiebeer #1殿堂 トップ50レビュアー
 7つの連作短編が織りなす、複数の男女の静かに歪んだ日常の物語。
 1997年に『バニシングポイント』の表題で単行本化されたものを、初出時のタイトルに戻して再刊行されたとの由。

 文章の技巧派である佐藤正午の筆が紡ぎだす世界にとにかくどっぷり浸りたくて手にしました。ですから連作短編であることも知らず、それぞれの作品の間のつながりも見えぬまま頁を繰ったのです。

 主人公たちは互いに見ず知らずの仲で登場し、そのまま深く切り結ぶこともないまま物語の中を歩んでいきます。彼らは時たま思わぬ接点を得るのですが、それは「袖触れ合う」程度の淡い関係です。

 今年2011年に出版された佐藤正午の新作小説『ダンスホール (テーマ競作小説「死様」)』の端緒がそこにあるように思われます。その書評で私は「『六次の隔たり(Six Degrees of Separation)』が人に生きる力を与える物語」と書きました。
 ただし『事の次第』のほうはむしろ、やはり六次の隔たりの仲にある男女が、どこか生きる気力を失っているようにも思えます。

「別に一刻も早く死にたいと思っているわけではないし、妻や子供たちを大切に思わないわけでもないのだが、彼は心のどこかに、この世にたいした未練があるわけではなく、自分はいつ死んでもかまわないのだという覚悟を眠らせているのかもしれない」(「寝るかもしれない」39頁)

「どうせ死ぬのなら一息に確実に死にたいもの、今日か明日というわけでもないんだけど、いつ死んでもいいと覚悟を決めているから、そのときが来ても迷わないように、毎日散歩がてら歩き回って適当な建物を探してるの」(「そのとき」75頁)

 このように彼らは生の気力をたぎらせる場を日常の中に見出せずにいるのです。
 
 しかし思えば、日々そうした気持ちをみなぎらせながら生きる人はそれほど多くはありません。人々はケの日を普段生き、運がよければハレの日をたまに迎える幸運にも恵まれる。うるさくもなく、また終わりのない日常を人々は倦むこともなく生きる毎日なのです。

 そんな人々の姿がつまった7編に、妙に心惹かれる自分がいることに気づかされます。
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