社会構造の変化に伴う大学進学率の上昇、第二次ベビーブームによる受験生の増加、高校の教育体制の変化などを経験してきた予備校Kの過去30年間の取り組みを、平易に綴った一冊。
教科の意味や本質について熱弁をふるう全共闘世代の個性的な講師陣、行き場のない学生を受け入れる多様なコースやアクティビティー作り、中国、韓国、日本の試験問題とその正解の比較、等々、ユニークで興味深いエピソードが数多く紹介されている。そもそも予備校は「ビジネス」であり、その一義的な目的は、大学合格者数を増やし、多くの生徒を集め収益をあげることにあるといえよう。しかし、一方で受験生ないし教育を取り巻く状況を冷静に分析し、また生徒の視点に立ち、教育の本質に肉薄してきた姿がうかがえる。
大学や社会が求める人材は時代によって変化するものであり、学生の能力も様々だ。「適切な教育」といったものは断定的に語られるものではないだろう。本書では「教育とはこうあるべきだ」といった強い主張ではなく示唆的な提言が多いが、それこそが予備校の柔軟な体質を表しているのではないだろうか。そして、状況に応じた対策のヒントがこの本には詰まっている。
また、予備校Kの取り組みに通低する、十代の多感な若者達に多様な経験をさせ彼らの才能を育んでいきたいという姿勢が印象的だが、これは、方法論を議論する前にまず立ちかえりたいポイントだと感じた。